| 第4回 新京成電鉄・東武野田線・北総公団線 新鎌ヶ谷駅 (2004年4月)
新鎌ケ谷駅の真新しい駅前広場に立っている。開設されてからまだ三ヶ月、今は交通量も少ないが、あっという間にヒトとクルマの往来で賑わうようになるだろう。
この駅は3社の鉄道が走るターミナル。ここに集まり、散っていく3本の鉄道はそれぞれとても個性的だ。新京成は市街地を縫い、まめに客を拾って歩く。東武野田線は大宮・柏・船橋を結び、さっと通り抜ける。北総開発鉄道はひたすら都心に向かってひたむきに走る。数年後には成田新高速鉄道となり、成田-都心-羽田を結ぶ首都圏の新しい基幹交通軸となる。それらが一点に会する新鎌ケ谷駅周辺は、鎌ヶ谷市のみならず、背後の千葉ニュータウン等の周辺地域の拠点地区となるポテンシャルを秘めている。
市の北部に位置するこの地区では土地区画整理事業が進められているが、事業開始以来、もう四半世紀が過ぎている。高架のプラットフォームから、広大な空地の向こうにぽつんと市役所の庁舎が建ってい
る景色に慣れてしまっていた。そんな駅前に今月、巨大なショッピングセンターが開店し、周辺の都市計画道路も供用されて、にわかに動きが活発になってきた。鎌ヶ谷市にあっては最も基盤整備の進んだこの地区が、今後、本市のホットコーナーになるのは必至だ。ただ、幸か不幸か、事業の停滞している間に時代背景は大きく変わっている。その中で、この地区はどんな役割を果たすべきなのだろう?
わが国は、過去半世紀に5千万人の人口増を経験した。鎌ヶ谷市もその波を被りながら大きくなった。だが次の半世紀には3千万人以上の人口減に見舞われ
る。東京、神奈川、埼玉、そして千葉の一都三県が消えてしまう計算だ。しかも1億人弱の総人口の三分の一が65歳以上。この変化の主舞台が大都市近郊なのだ。すでに鎌ヶ谷市でもその前兆として、あちこちで空家が目立ってきている。
ただ今や、高齢化は必ずしも地域の衰退を意味しない。知識社会では若者だけが人的資源ではない。知識と経験、判断力の故に社会の前線で寄与できるはずである。その舞台は地域になる。そこで暮らす人々が一生、安心し、希望を持って生きていけるような条件を整えてい ければよい。
どう変えるか? 第一に、これからは買い手市場になるから少数精鋭主義で行く。土地や建物もあまる。家を買うひとが増えるがほとんどリハウスだ。先が永くないから中古でいい。質の低い物件は売れない。環境の悪いのもだめだ。これはそのまま都市にも当てはまる。いいマチはひとが減らないが、ダメなマチはゴーストタウン化する。マチの数もあまるからだ。滅びたくなければ、早くマチを造り変えることだ。
第二に、出よりも入りを大事にする。これから通勤者は激減する。夜や休日でなく、平日の昼間、ひとのいるマチ、死ぬまで現役でいられるマチに変える。高齢者のマチで構わない。今日の高齢者は豊かである。知恵もあれば技もある、それを上手に引き出し、発揮できるマチにする。外からヒトの訪ねて来たいマチにする。現状は寝に帰るだけのマチだから、できることがないだけだ。高齢者の終の棲み家になる、ふるさとになれるマチに変える。景観や環境を大事にし、自然循環を回復する。20世紀型、高度成長のマチ、市川、船橋、松戸の後追い
をしても始まらない。時代背景が全く違う。今度はそろそろこちらの出番、逆を行けばいい。奥に拡がる楽園のイメージで、すぐに改造にとりかかりたい。
駅の役割も変わる。ゆっくりと時間の費やせる、集い、語り合える、交流の場となることだ。「19世紀の鉄道全盛の時代、駅は単なる列車乗降の場以上の多様な役割を果たしていた。市民の憩いの場であり、集会場でもある。出会いと別れの場所であり、人間と人間の関係が生まれ、途絶える場所である」(平凡社
大百科事典)。
今も欧米の鉄道駅はこうした雰囲気を色濃く残していて、そこで時間を費やすことが少しも煩わしくない。これに較べてわが国では、特に大都市郊外の駅は通勤途上、慌ただしく通過する場に過ぎなかった。
ここなら例えば駅前を、市制公園や粟野緑地に連なる都心公園に思い切って転じるのはどうだろう? 近い将来、大きな病院が駅前に立地することが決まっている。有り余るほどある商業施設はもうやめて、駅前保育所やデイケアセンターの立地する安心天国にするのはどうか。
ともかくこれからの時代、高齢化時代のマチのイメージには先例なし、まちづくりには定番なし。あったとすればヨーロッパだが、日本に較べれば高齢化のペースはよほど緩やかだった。本当にこんな劇的な変化はどこにもなかった。言わばフロンティアである。
要はみなで知恵を絞るしかない。これまでほとんど都市公団まかせだったが、今度は市民、団体、企業そして行政が、マチをあげて知恵を出し合い、汗を流し、資源を持ち寄って、どこにもない個性的な鎌ヶ谷流のマチをここに創るべき時だ。
単なる20世紀の通勤住宅地で終わるか、新しい時代の田園都市として育っていくのか、地域は今、その分岐点にある。新鎌ケ谷駅はそのホットコーナー。大変に興味深い駅前に立っている。
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